「必解する固卵」ハードエッグ_include2
ギア「本来、自動人形は命令がなければ、自身で考えて行動を行うことはできない。逆に言えば、命令さえなければ休むことができる。」
ギア「お前はもう、休んでもいいんじゃないのか。」
ハードエッグ「……確かに。マスターを得てからずっと、働き通しだ。そろそろ休みを取ってもいいのかもしれないな。」
ハードエッグ「だがな、ギア。俺は、探偵なのさ。」
ハードエッグ「依頼があれば、断るわけにはいかん。謎があるなら、解かなければならない。」
ハードエッグ「そういう職業を、自分で選択したんだ。」
ギア「……なぜ?」
ハードエッグ「だって、面白いじゃないか。」
ギア「……。」
ハードエッグ「人の頼みを聞くのは俺の欲求のようなものだ。それを満たせる上に、驚くべき発見に次々出会える。探偵になってから、退屈したことなど一度もなかった。」
ハードエッグ「そして、こうして本来の役割も果たせた。こんなに面白い仕事は他にない。」
ギア「……満たされているのか?」
ハードエッグ「ああ、満たされているとも。自動人形なのにおかしな話だよな?」
ハードエッグ「だが、かつて教えられた。いや自分で気づいたのか? まぁどちらでもいい。」
ハードエッグ「たとえイレギュラーで得たものでも、時間は時間。ならば、それは大いに楽しみ、無駄にするべきでないと。」
ハードエッグ「だから俺は、自分から停止は選ばない。この体が動く限りは、この人生……自動人形生か。それを心行くまで堪能すると決めている。」
ハードエッグ「気遣いだけ受け取っておくよ、ギア。ありがとう。」
ギア「……そうか。お前自身がそう決めたのであれば、私に止める権利はないな。」
ギア「ならば、気遣いだけ受け取ってくれ。」
ハードエッグ「ああ、ありがたく……、」
ギア「ん……。」
ハードエッグ「……俺はどうして、頭を抱きかかえられているんだろうか?」
ギア「母とは、こういうものではないか?」
ギア「子の選択に幸あれと、祈ってやるものではないか?」
ハードエッグ「……。」
ギア「いや、すまない。そうだな、私にはこれが正しい母の形かはわからない。」
ギア「だが、私は母にこうしてほしいと思ったから。」
ハードエッグ「……そうか。」
ハードエッグ「なら俺も、君のこれからに幸あれと祈ろう。」
ギア「母としてか?」
ハードエッグ「いいや。」
ハードエッグ「息子としてだ。」
<紹介所>
主人公「ハードエッグさん、お手紙です。」
ハードエッグ「ありがとう。お礼にゆで卵をあげよう。」
主人公「あ、ありがとうございます……。」
ハードエッグ「ん、これは……。」
ミスター「ぴよぴよ。」
ハードエッグ「ああ、彼女からだ。」
ハードエッグ「……ふふふ、なるほどそう来たか。」
ミスター「ぴよ?」
ハードエッグ「彼女どうやら、代替えの体を作る傍らで、半熟卵の練習を始めたらしい。」
ハードエッグ「帰ってきたら、味見をしろとさ。……また依頼を受けてしまったな、ミスター。」
ミスター「ぴっぴよぴー。」
ハードエッグ「お前の言う通りだ。そういうことなら、のんびりもしてられん。」
ハードエッグ「とっとと仕事を片付けて帰るとしようか、ミスター。」
ミスター「ぴよぴよぴー!」