「賭場の蒐愛帝」ルルーベット_story
村の青年「よし……、よしよし!」
村の青年「そりゃあ、フォー・オブ・ア・カインドだ! しかも、全部エース!」
ルルーベット「わぁ、強い。予想外。」
村の青年「へへへ、今度こそ俺の勝ちだな! この勢いで、逆転を……!」
ルルーベット「ふぅ、危なかったなぁ。 もう少しで負けちゃうところだった。」
村の青年「へ?」
ルルーベット「それじゃあ、私も出すね? ハートの8、9、10の……、」
村の青年「ま、まさか……!」
ルルーベット「ジャックの、クイーンで……ストレートフラッシュ。 ふふふ、私の勝ち~。」
村の青年「なぁー……!」
ルルーベット「ふふふ、楽しいねぇ。楽しいねぇ。 それじゃあ、約束通り……。」
村の青年「ひぇっ!」
ルルーベット「た~っぷり私の相手をしてね~。」
村の青年「ひやぁあああ!」
メルク「みゅみゅ~……。 これはいったい、どういう状況なのです?」
紹介所のお姉さん「……また、ルルーベットさんの敗北者が出てしまったのね。」
メルク「みゅみゅ!? 知っているのです、紹介所のお姉さん!」
紹介所のお姉さん「ええ、彼女はルルーベットさん。 西部の国からやってきた、生粋のギャンブラーよ。」
紹介所のお姉さん「とにかくギャンブルが大好きで、しかも強い。 とんでもない豪運の持ち主なの。 今負けた彼も、見事な10連敗だったわ。」
メルク「お、恐ろしいのですよ……。」
紹介所のお姉さん「いいえ、彼女が真に恐ろしいのはここからよ。」
メルク「こ、ここから、なのです?」
紹介所のお姉さん「そう、彼女は大のギャンブル好きであると同時に……、」
紹介所のお姉さん「大の年下の男の子好きなの!」
メルク「年下の男の子好き!?」
紹介所のお姉さん「正確に言うと、誰かを可愛がるのが何よりの喜びらしわ。 中でも、年下の男の子が好きらしくて……、」
紹介所のお姉さん「ほら、あの嬉しそうな顔を見て。」
ルルーベット「ふふふ、可愛いねぇ、可愛いねぇ。」
村の青年「ああ、やめて! 撫でないで! あふぅ、なんていい心地……。」
ルルーベット「初めて会ったときからねぇ。 ず~っと貴方が欲しいと思ってたんだよ?」
ルルーベット「でもね、家族がいるなら引き離せないよね。 だから今だけ、存分に甘やかさせてねぇ。」
村の青年「う、うわわぁー!」
メルク「た、たしかに嬉しそうなのです。 ……負けた男の人も、なのですが。」
紹介所のお姉さん「ああ……、哀れだわ。 彼が20歳だったばっかりに、ルルーベットさんの標的になってしまうなんて。」
メルク「あ、哀れは言いすぎではないのです? 男の人も嬉しそうなのですよ。」
紹介所のお姉さん「ええ、ルルーベットさんは、全力でその人のことを愛して、甘やかすもの。 嫌な気持ちになるわけがないわ。」
紹介所のお姉さん「……私も試しにやってもらったけど、もう凄かったわ。 生まれてきて良かったと思ったわ。」
メルク「そこまでなのです!?」
紹介所のお姉さん「でもね、それが問題なのよ。 あまりにも全力で愛を注ぎすぎるから……、」
男の人1「そんな! ルルーベットさんが、俺以外の男の人とイチャコラしている!」
男の人2「僕だけが彼女の1番だと思ってたのに! な、なんてことだー!」
メルク「な、なるほどなのです……。」
紹介所のお姉さん「ルルーベットさんは、みんなを平等に愛しているだけで、悪気はないんだけど……、」
紹介所のお姉さん「見ている方は、そうもいかないわよねぇ。 はぁ……、ルルーベットさん。」
メルク「説得力たっぷりのため息をありがとうなのです……。」
ルルーベット「ふぅ、まんぞく~。」
紹介所のお姉さん「あら、ルルーベットさん。 勝った分は可愛がらせてもらったの?」
ルルーベット「うん、10連勝なら、これぐらいにしておかないと。 あの子も、疲れてしまったみたいだし。」
村の青年「生まれてきて、良かった……。」
メルク「放心状態なのですよ……。」
ルルーベット「ふふふ、貴方も可愛いねぇ。」
メルク「みゅみゅ! わ、私も対象なのです!?」
ルルーベット「女の子も、モンスターも、動物も、み~んな大好きだよ。 1番好きなのは男の子だけどねぇ。」
ルルーベット「ねえねえ、可愛がらせてくれる? それとも、ギャンブルで決めようか?」
メルク「そ、それは……!」
村の青年「家族にもっと、優しくしよう……!」
メルク「(私もああなってしまうのです~!?)」
メルク「(……いや、あれはあれでそれほど悪い変化ではない気も……?)」
主人公「メルク、お待たせ。」
メルク「みゅ! 主人公さん!」
メルク「……みゅ!」
紹介所のお姉さん「まずいわ! 逃げて、主人公くん!」
主人公「へ? なんで……、」
ルルーベット「……!」
主人公「うわっ、びっくりした!」
ルルーベット「……君。」
主人公「は、はい?」
ルルーベット「可愛いねぇ!」
主人公「へ!?」
ルルーベット「可愛いねぇ? 可愛いねぇ! ふふふ、欲しいな~。私、貴方が欲しいなぁ!」
主人公「は、はい!? こ、これはいったいどういう……!?」
紹介所のお姉さん「なんてこと……。 主人公くんは、ルルーベットさんの好みにジャックポットだったんだわ!」
メルク「主人公さん、気をしっかり保つのです! 愛されすぎて、自分を見失ってはダメなのです!」
主人公「俺にわかるように説明してくれないか!?」
ルルーベット「ねえねえ、君。 主人公くん、っていうんだっけ?」
主人公「そ、そうですけど……。」
ルルーベット「私の家で働かない?」
主人公「どうして!?」
ルルーベット「だって貴方、とっても可愛いから! 私の家で、毎日ゴロゴロ気ままに暮らしながら、私に思う存分可愛がられてくれないかなぁ?」
メルク「な、なんとデメリットのない雇用条件なのです!?」
紹介所のお姉さん「羨ましい!」
主人公「い、いや、受けないから! そんな急に自堕落を極める覚悟はないから!」
ルルーベット「ダメなの? むぅ、ヴァーディルくんはこの条件であっさりと頷いてくれたのになぁ……。」
主人公「ま、まぁ、魅力のある提案だっていうのはわかりますけど……。」
ルルーベット「んん~、でも諦めるには惜しいなぁ。 仕方がない、こういう時は……、」
ルルーベット「ギャンブルで勝負だね。」
主人公「なぜ!?」
ルルーベット「困った時はギャンブル、ギャンブル。 私の大親友がねぇ、教えてくれたから。 だから間違いないの。うんうん。」
主人公「そのギャンブルに対する絶大な信頼はいったい……。」
ルルーベット「それじゃあ、簡単かつシンプルなコイントスで……、」
メルク「ちょ、ちょっと待ってほしいのですよ! 今のままだと、主人公さんが勝負する理由がないのです!」
ルルーベット「ん~、それもそうだね。 それじゃあ、え~っと……。」
ルルーベット「うん、私が勝っても家に来てとは言わないよ。 ただ1日、私に可愛がらせてほしいなぁ。」
メルク&紹介所のお姉さん「1日も!?」
主人公「そ、それぐらいならいいですけど。」
メルク「迂闊すぎるのですよー!」
ルルーベット「それで、私が負けたらねぇ。 いいいよ、何でも好きなことを聞いてあげる。」
主人公「バランスが取れてないのでは!?」
ルルーベット「ん~? いつもこの条件なんだけどなぁ。 ふふふ、リスクのない賭けは面白くないもんねぇ?」
ルルーベット「さぁさぁ、どうするかなぁ? やるかなぁ?」
主人公「メ、メルク……?」
メルク「ここまで来たら、やるしかないのですよ! 負けないように応援しているのです!」
主人公「お、応援でどうにかなるものなのか? まぁ、いいけどさ。」
主人公「えっと、それじゃあ……お願いします。」
ルルーベット「ふふふ、ありがとねぇ。 それじゃあお姉さん、トスをお願い。」
紹介所のお姉さん「わ、わかったわ。 じゃあ……行くわよ!」
紹介所のお姉さん「それっ!」
メルク「みゅ!」
主人公「おぉ……!」
ルルーベット「……。」
紹介所のお姉さん「はい! どっち?」
ルルーベット「選んでいいよ。」
主人公「じゃあ……表で!」
ルルーベット「……なら、私は裏だねぇ。」
紹介所のお姉さん「それじゃあ、開けるわ……。それっ!」
メルク「みゅみゅ! こ、これは……!」
紹介所のお姉さん「……表!」
主人公「あ、やった。」
メルク「良かったのですよぉ~!」
主人公「さっきから大袈裟すぎだぞ!?」
ルルーベット「……あーあ、残念。負けちゃった。」
ルルーベット「主人公くんは私には相応しくなかったのかなぁ? ふふふ、残念だぁ。残念だなぁ……。」
主人公「ルルーベットさん……。」
ルルーベット「でも、ギャンブルの結果なら文句はないよぉ。 さ、好きにしちゃってねぇ。」
主人公「……何でも好きに事、でしたよね。」
主人公「それじゃあ、仲間になってもらえますか。」
ルルーベット「……え?」
メルク「主人公さん……。」
主人公「いいよな、メルク?」
メルク「……はいなのです!」
主人公「これなら俺と一緒にいられるから、ルルーベットさんとしても悪くないのかなって……。 ど、どうですかね?」
ルルーベット「……ふふふ、変なの。 勝ったのは君なんだから、私のことなんて気にしなくていいのに。」
主人公「仲間になってもらえるのは、こっちにとっても有難いことですから。」
ルルーベット「ふふふ、優しいんだねぇ。 いいなぁ、いいなぁ、嬉しいなぁ。 貴方みたいな素敵な子の仲間になれるなんて!」
主人公「あはは、そこまで喜んでもらえると、こっちまで嬉しくなって……、」
ルルーベット「……ますます、欲しくなっちゃった。」
主人公「ひぇ……!?」
メルク「た、大変な旅になりそうなのですよ……。」
紹介所のお姉さん「羨ましい……。」